
【要点まとめ】
■石綿(アスベスト)の事前調査は、原則として「書面調査」「現地調査(目視)」を行い、それでも不明な場合に「分析調査」を行う3ステップです。
■2006年(平成18年)9月1日以降に着工された建築物は、基本的に「石綿の含有なし」と判断できます。
■書面や目視で含有が確認できない場合、実務上は「分析調査」を行うか、「石綿ありとみなして」工事を進めるかの判断が必要になります。
■試料採取(サンプリング)は飛散リスクを伴うため、「石綿作業主任者」が厳重な注意のもと行う必要があります。吹付け材等の場合は専門業者への委託が安全です。
■適正な事前調査には費用と時間がかかるため、発注者の全面的な理解と協力が不可欠です。
こんにちは。10/1に神奈川県で行政書士事務所の開業を予定しています藤原素雄です。
これまで建設現場の現場監督として安全管理に携わり、「建築物石綿含有建材調査者」「石綿作業主任者」の資格を持つ実務家の視点から、建設業許可取得後に必ず守らなければならない「石綿(アスベスト)の事前調査の手順」について解説いたします。
(今回は大半の建設業者が関係する、建築物に対する事前調査を解説します)
※石綿(アスベスト)事前調査の「概要」については、過去記事をご参照ください。
[リンク:石綿(アスベスト)事前調査は必須!建設業許可の取得後に守るべきルール]
(1)石綿(アスベスト)事前調査の全体像と基本フロー
調査は原則として、以下のフローで進めます。(建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアルより抜粋)
①発注者からの情報提供
②書面調査
③現地での目視調査
(上記で不明な場合のみ)分析調査 または 石綿ありとみなす
基本は「書面調査」と「現地での目視調査」を原則として実施し、それでも含有の有無が不明な場合にのみ「分析調査」を行います。ただし、現実的には書面や目視だけで含有を完全に否定(確認)できるケースは少ないのが実情です。
(2)手順①:図面やデータベースから探る「書面調査」
まずは図面や書類から、石綿が含まれている可能性を探ります。
■図面等の読み込み: 建築物を建てるために必要な全ての図面・仕様書を読み込んで、工事に影響が及ぶ箇所の「全ての使用部材」を確認します。
■着工日の確認: 対象の建築物が2006年(平成18年)9月1日以降に工事着手された場合、基本的には「石綿の含有無し」と判断できます(※同日に石綿の製造等が全面禁止されたため)。
■データベースとの照合: 使用部材のメーカーHPや、「石綿(アスベスト)含有建材データベース」などで含有の有無を確認します。 [リンク:石綿(アスベスト)含有建材データベース]
(3)手順②:現場で直接確認する「現地調査(目視調査)」
書面調査で石綿の含有確認ができなかった場合は、現地に赴きます。
■目視での情報確認: 実施する工事の影響が及ぶ全ての部材について、製品名・型式・製造番号などを直接目視で確認します。
■データベースとの再照合: 現地で得た情報を基に、再度メーカーHPやデータベースで含有確認を行います。
※注意点: 調査時に部材を傷つけて石綿が飛散しないよう、厳重に注意して作業を行う必要があります。
(4)手順③:最終手段としての「分析調査(サンプリング)」
現地調査(目視)でも石綿の含有確認ができなかった場合の手段です。
■試料採取: 対象となる全ての部材を、数センチ角のサイズで切断・採取します。
■厳重な梱包: 切断した部材を2重に袋詰め等をして、専門業者に分析の依頼をします。
※注意点: この一連の作業は「石綿作業主任者」が行い、飛散防止や作業者が吸引しないように十分な注意をして行う必要があります。
※実務上のアドバイス: 石綿の種類が「吹付け材(レベル1)」や「断熱材(レベル2)」と疑われる場合は、自社で採取を行わず、専門業者に委託した方が安全かつ確実です。
(5)まとめ:発注者の協力と確実な飛散防止体制づくり
石綿の事前調査を行うためには、大変な労力と費用を要します。そのため、発注者が全面的に協力をして、元請企業が適切な事前調査を行える体制を確保する必要があります。
石綿は一度飛散すると広範囲(数キロ単位)に広がり、周辺の住民にも健康被害を及ぼすことを強く意識して、確実な手順を実践していただきたいと思います。地域の環境汚染の防止と、事業の安全な発展に貢献できれば幸いです。
この記事を書いた人 Wrote this article
藤原 素雄
建設業・サービス業界にて20年以上、現場監督や設備購買、コンプライアンス推進の実務を経験。購買部員として数千件に及ぶ発注実務をこなし、下請取引と法令遵守の専門家です。 ISO(9001/14001/IATF16949等)推進員や内部監査員の知見も有しており、取適法(旧下請法)や建設業法に準拠した契約書・発注書面の作成から、社内規定の構築までサポートします。建築物石綿含有建材調査者や特管産廃管理責任者など現場資格も多数保有。長年の実務経験を活かし、発注側・受注側双方が安心して取引できる環境づくりと、より良い社会の実現に貢献いたします。
