
【要点まとめ】
■「特定工作物(反応槽やボイラーなど)」の事前調査は、「工作物石綿事前調査者」の資格が必須です(一般の建築物は一般建築物石綿含有建材調査者等で対応可)。
■石綿含有の有無にかかわらず、元請業者は工事着手前に発注者へ「調査結果」を書面で説明する義務があります。
■含有の有無が判断できない場合は自己判断せず、「石綿含有とみなす」か、事前に労基署や自治体へ相談することが重要です。
■一定規模以上の工事(80㎡以上の解体、税込100万円以上の改造・補修など)は、発注者への説明に加えて「公共団体への報告義務」も発生します。
■調査にかかる費用は、発注者にも適切に負担いただくことが大気汚染防止法で定められています。
(1)石綿の事前調査は「誰が」実施できるのか?(資格要件)
こんにちは。10/1に神奈川県で行政書士事務所の開業を予定しています藤原素雄です。
今回は、建設業許可取得後に必ず守らなければならない「石綿(アスベスト)の事前調査」について、「誰が実施できるのか」「発注者への報告で何が必要か」を解説いたします。法改正により、多くの建設業者様が対策に大変苦労されている内容です。
まず結論として、応槽やボイラーなど特殊な「特定工作物」の解体では、「工作物石綿事前調査者」の資格を持つ人でなければ調査できません。
一方で、一般的な建築物の解体・改修であれば、「一般建築物石綿含有建材調査者」等でも対応可能です。まずはご自身の対象工事が「特定工作物」に当たるかどうかを確認することが第一歩となります。 ※以下の厚労省発行のリーフレットを参照ください
(2) 必須ルール:発注者への「書面による事前説明義務」
石綿含有の有無にかかわらず、元請業者は工事着手前に発注者へ調査結果を書面で説明する義務があります(大気汚染防止法第18条の15第1項)。
この説明書面には、発注者・元請業者双方の記名欄のほか、「調査を行った者」「調査方法」「調査結果」を記載する欄が定められています。記入漏れがあると後から手戻りが発生しやすいため、あらかじめテンプレートを手元に用意しておくと安心です(※厚労省・環境省発行のマニュアルや、各自治体等のHPよりエクセルデータのダウンロードが可能です)。 [リンク:(浜松市の説明書類様式(例)]
(3)実務の壁:含有の有無が判断できないときの対処法
以前、私が製造装置の解体・廃棄に携わった際、複数箇所で石綿含有の有無を判断しきれないケースがありました。このようなとき、自己判断で「含まれていない」と扱うのは大変危険です。
私はこのとき、横浜市及び管轄の労働基準監督署に相談し、その助言に基づいて該当箇所を「石綿含有とみなして」解体作業を進めた経験があります。判断に迷う箇所がある場合は決して自己判断をせず、事前に管轄の公共団体や労働基準監督署に相談することをお勧めします。
(4) 要注意!公共団体への報告が必要な3つのケース
以下のいずれかに該当する工事の場合は、発注者への説明だけでなく、公共団体への報告も必要になります。
■解体工事部分の床面積の合計が80㎡以上の建築物の解体工事 ■請負金額が税込100万円以上の建築物の改造・補修工事 ■請負金額が税込100万円以上の特定の工作物の解体・改造・補修工事
(5)まとめ:適切な事前調査体制の構築に向けて
事前調査は、対象工作物の判定から調査者の手配、発注者への説明書面の作成、公共団体への届出まで対応すべき事項が多く、実務上迷う場面も少なくありません。届出を怠ったり、必要な資格者以外が調査を行ったりした場合、罰則の対象となるだけでなく、工事の中断や近隣とのトラブルにつながることもあります。
事前調査には相応の時間と費用がかかりますが、この費用は発注者様にも適切にご負担いただくことが大気汚染防止法で定められています。
建築物石綿含有建材調査者としての実務経験を踏まえ、調査状況の確認や発注者向け説明書面の作成支援などについてもサポートできる体制を開業に向けて整えております。
この記事を書いた人 Wrote this article
藤原 素雄
建設業・サービス業界にて20年以上、現場監督や設備購買、コンプライアンス推進の実務を経験。購買部員として数千件に及ぶ発注実務をこなし、下請取引と法令遵守の専門家です。 ISO(9001/14001/IATF16949等)推進員や内部監査員の知見も有しており、取適法(旧下請法)や建設業法に準拠した契約書・発注書面の作成から、社内規定の構築までサポートします。建築物石綿含有建材調査者や特管産廃管理責任者など現場資格も多数保有。長年の実務経験を活かし、発注側・受注側双方が安心して取引できる環境づくりと、より良い社会の実現に貢献いたします。

