
【要点まとめ】
■建設工事の該非は「建設業許可の要否」「見積・発注書面の適法性」「取適法(旧下請法)の適用」など、企業のコンプライアンスや取引条件に直結します。
■基本的な判断基準は、「土地や土地に定着する工作物に直接加工を加えるか」です。
■機器の設置であっても、床へのアンカー固定や建屋への配線固定を行えば「建設工事」に該当する可能性が高くなります。
■施設の保守点検、清掃、測量、消耗部品の交換などは「除外作業」となり、建設工事には含まれません。
(1) なぜ「建設工事の該非判定」が重要なのか?
今回の投稿では、建設工事に該当するのか、該当しないのかの基準(該非判定)について解説します。
この該非判定は、単なる言葉の定義ではありません。判定結果によって、建設業許可(決算報告含む)の要否、帳簿の作成義務、そして発注者(施主)や下請業者へ提出する見積書の内容・発注書面・工事請書・支払条件などいろんな影響が及びます。
そのため、工事業者様はもちろん、機械装置メーカーの営業・購買担当者様にとっても非常に重要な見極めとなります。
私が建設業の購買部門で年間数百件の下請契約を締結していた6年間においては、全社の所属員に対して以下の基準を明確に説明し、適正な発注業務を徹底していました。
(2)建設工事を見極める「基本ルール」
実務上、建設工事に該当するかどうかは以下の定義をベースに判断します。
【建設工事の基本定義】
「土地や土地に定着している工作物(建屋、橋、塔など)に直接加工を加える作業」の中で、対象工種(現在は29工種)に該当し、かつ後述の『(3)建設工事にあたらない「除外作業」一覧』を除いたもの。
■工作物に含まれるもの:
建屋そのもののほか、電気の幹線(屋外から引き込まれて各分電盤までの配線)やメイン配管、新築時に据え付けられている各ユーティリティも工作物の一部とみなされます。
■対象外となる作業:
装置の電源をコンセントに接続する作業などは、建設工事の完成を目的とした請負契約の性質に馴染まず、単なる軽微な作業(または役務)とみなされるため対象外です。
(3)建設工事にあたらない「除外作業」一覧
現在の神奈川県の建設業許可の手引き等に基づくと、以下の作業は建設工事から除外されます。
■剪定、除草、草刈り、伐採
■道路・緑地・公園・ビル等の清掃や管理、建築物・工作物の養生や洗浄
■施設・設備・機器等の保守点検、(電球等の)消耗部品の交換
■調査、測量、設計
■運搬、残土搬出、地質調査・埋蔵文化財発掘・観測・測定を目的とした掘削
■船舶や航空機など「土地に定着しない動産」の築造・設備機器取付
■自家用工作物に関する工事
(4)【実践編】現場での該非判定・4つの具体例
製造装置の設置や試運転を例に、具体的に「該当(建設工事である)」「非該当(建設工事ではない)」の境界線を見てみましょう。
■【非該当】建屋内に製造装置を仮置きした(アンカー固定していない)
(理由:工作物に加工を加えていないため)
■【該 当】建屋内の分電盤から上記製造装置への仮配線を行った(床転がし配線)
(理由:工作物である「分電盤」に加工を加えているため)
■【非該当】上記製造装置の試運転を行うため、製造装置の制御盤と装置本体への仮配線を行った(床転がし配線)
(理由:装置間の配線であり、工作物に加工を加えていないため)
■【該 当】上記製造装置の試運転を行うため、製造装置の制御盤と装置本体の配線を行い、配線は建屋に固定した
(理由:工作物である「建屋」に加工を加えているため)
(5)建設業法・建築基準法における定義
より厳密な該非を考えるべく、各法令の条文も確認しておきましょう。なお、四国地方整備局の「建設業許可Q&A」でも、『建設工事の対象物は、土地または土地に定着する一連の工作物であるかどうかが一つの判断基準です』と記載されています。
■建設業法
「建設工事とは土木建築に関する工事で別表第一の上欄に掲げるものをいう」(※別表第一は土木一式工事などの29工種)
■建築基準法
「建築物とは土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(中略)をいい、建築設備を含むものとする」
(6)まとめ:判断に迷ったときは専門家へ
実際の該非判定は個別具体的な状況により異なり、管轄の行政機関によっても見解が分かれる場合があります。本記事は一般的な基準の一つとしてご参考になさってください。
法令遵守の観点からも、詳細な判断については専門家に問い合わせるのが一番確実で安全です。当事務所でも、あらゆる建設業法の規定についてお答えできる行政書士になれるよう、10/1の行政書士事務所の開業に向けた準備を進めております。
この記事を書いた人 Wrote this article
藤原 素雄
建設業・サービス業界にて20年以上、現場監督や設備購買、コンプライアンス推進の実務を経験。購買部員として数千件に及ぶ発注実務をこなし、下請取引と法令遵守の専門家です。 ISO(9001/14001/IATF16949等)推進員や内部監査員の知見も有しており、取適法(旧下請法)や建設業法に準拠した契約書・発注書面の作成から、社内規定の構築までサポートします。建築物石綿含有建材調査者や特管産廃管理責任者など現場資格も多数保有。長年の実務経験を活かし、発注側・受注側双方が安心して取引できる環境づくりと、より良い社会の実現に貢献いたします。