【要注意】発注者(施主)にも罰則が!建設業法の「勧告・公表」リスクと波風を立てない交渉術

【要注意】発注者(施主)にも罰則が!建設業法の「勧告・公表」リスクと波風を立てない交渉術

【要点まとめ】                                         
■知られざる罰則: 建設業法は受注者だけでなく、実は「発注者(施主)」に対しても厳しいルールと罰則(勧告・公表)を設けています。
■3つの違法行為: 「不当に低い請負代金」「指定資材の購入強制」「著しく短い工期」での契約は、発注者側が罰則の対象となります。
■「公表」の破壊力: 罰則が「公表」に留まると侮ってはいけません。現代のコンプライアンス社会において、行政からの公表は発注者の企業イメージにとって致命傷となります。
■是正交渉のコツ: 問題発生時は発注者を責めるのではなく、「御社のブランドと信用を守るため」というスタンスで是正を促すのが円滑な解決の鍵です。

(1)意外と知られていない?「発注者(施主)」に対する建設業法の罰則

こんにちは。10/1に神奈川県で行政書士事務所の開業を予定しています藤原素雄です。

建設業法と聞くと、「建設業者(受注者)だけが守るべき厳しいルール」という印象をお持ちの方が多いのではないでしょうか。発注者(施主)の多くも建設業法をご存じないケースが散見されます。
しかし、建設業法では受注者だけでなく、発注者側も全く同様に遵守しなければならない契約ルールが定められています。もし発注者がこれに違反した場合、国土交通大臣または都道府県知事から必要な「勧告」が行われ、それに従わない場合はその事実が「公表」されるという罰則規定(建設業法第19条の6)が存在するのです。

(2)勧告・公表の対象となる「3つの不当な行為」とは

具体的に、発注者がどのような行為をすると罰則の対象になるのでしょうか。建設業法(第19条の3、4、5)では、以下の行為を禁止しています。

【罰則対象となる3つの行為】

① 不当に低い請負代金の禁止 自己の取引上の地位を不当に利用して、通常必要と認められる原価に満たない金額で請負契約を締結すること。

② 不当な使用資材等の購入強制の禁止 自己の取引上の地位を不当に利用して、資材や機械器具の購入先を指定し、請負人の利益を害すること。

③ 著しく短い工期の禁止 工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して、著しく短い期間を工期とする請負契約を締結すること。
※上記③の罰則対象となる請負契約は、税込み500万円以上となります。


(3)【実務の知恵】「勧告・公表」は企業イメージへの致命傷になる

建設業者の皆様に対する営業停止などの重い処分に比べると、発注者への罰則は「勧告・公表」に留まっており、一見軽く見えるかもしれません。
しかし、決して侮ってはいけません。 特に大手企業にとって、コンプライアンス違反による行政からの「勧告」は社内で大問題に発展します。さらに、それに従わず「違反企業として国から公表されること」は、企業イメージの著しいダウン(致命傷)に直結します。SNSやネットですぐに拡散される現代において、「公表」は最も恐れるべきレピュテーション(風評)リスクなのです。

(4)発注者を「守る」スタンスで!波風を立てない是正交渉のアプローチ

では、発注者から不当な条件(極端な短工期や赤字強要など)を提示された場合、建設業者はどう対応すべきでしょうか。 「建設業法違反で公表されますよ!」と真っ向から指摘しては、角が立ち、今後の取引関係が悪化してしまいます。
ここで重要になるのが、「発注者を保護する気持ちで、是正の説明をする」という姿勢です。

【交渉のトーク例】
「大変申し上げにくいのですが、この工期(金額)で契約を進めてしまうと、建設業法上の不当な契約とみなされ、御社が行政からの勧告や公表の対象になってしまうリスクがございます。御社の企業イメージやコンプライアンスに傷がつくことを防ぐためにも、適正な条件でのご契約に調整させていただけないでしょうか」
このように、「自社のため」ではなく「発注者である御社を守るため」というスタンスで法律を提示することで、相手も冷静に耳を傾けやすくなり、波風を立てずに違法状態を是正することができます。

発注者の中には建設業法により罰則が科されることを知らない方もいらっしゃると思います。
このようなアドバイスが逆にありがたいと思われるケースもございます。

(5)国交省のガイドラインを活用し、正しい請負契約を


交渉の際の客観的な資料として、国土交通省が発行している『発注者と受注者間における建設業法令遵守ガイドライン』を活用するのも非常に有効です。(※2011年に初版が発行され、現在は第8版となっています)
現場で無理な要求に直面した際、感情的に反発するのではなく、こうした法令の知識を「自社と取引先を守る盾」としてスマートに活用してください。

来月の開業後、企業のコンプライアンス推進やCSR指導の実務経験を活かし、波風を立てない適正な契約実務のサポート等を行って参りたいと思っております。

この記事を書いた人 Wrote this article

藤原 素雄

藤原 素雄

建設業・サービス業界にて20年以上、現場監督や設備購買、コンプライアンス推進の実務を経験。購買部員として数千件に及ぶ発注実務をこなし、下請取引と法令遵守の専門家です。 ISO(9001/14001/IATF16949等)推進員や内部監査員の知見も有しており、取適法(旧下請法)や建設業法に準拠した契約書・発注書面の作成から、社内規定の構築までサポートします。建築物石綿含有建材調査者や特管産廃管理責任者など現場資格も多数保有。長年の実務経験を活かし、発注側・受注側双方が安心して取引できる環境づくりと、より良い社会の実現に貢献いたします。