取適法(旧下請法)は建設業者にも適用される!2026年からの法改正と厳格化への対応

【要点まとめ】
■「建設業法が適用されるから取適法(旧下請法)は無関係」という認識は大きな誤解です。
■建物に固定する「安全柵の製作」などを外注した場合、建設工事ではなく取適法の「製造委託」に該当する可能性が高いです。
■自社の資本金が1,000万円超、外注先の資本金が1,000万円以下などの要件を満たすと法律の対象となります。
■「代金の減額」や「不当なやり直し」は法令違反となり、公正取引委員会等への通報リスク(ニュース報道の対象)に直結します。
(1)建設業者が陥りやすい「取適法の罠」
建設業や設備業の皆様、日々の現場管理や発注業務お疲れ様です。
私は製造業や建設業の購買担当として6年間、実際に下請取引の発注を行ってまいりました。
その中で公取委や中小企業庁のガイドラインを日々確認していましたが、建設業の現場では
「自社は建設業だから、取適法(旧下請法)は適用されない」と思い込んでいるケースが
非常に多く見受けられます。
確かに、建設業法が適用される「建設工事」そのものは取適法の対象外です。
しかし、発注内容によっては建設業者であっても取適法が適用されるため、注意が必要です。
(2)具体例:安全柵の製作外注はどうなる?
現場でよくあるケースとして、「建設業者が建物の中に設置する(建物にアンカー固定する)安全柵の製作を外注業者に発注した場合」を考えてみましょう。
この場合、安全柵の「製作」を依頼する行為は建設工事(施工)には該当しません。
したがって建設業法ではなく、取適法における「製造委託(類型1)」として扱われることになります。
【製造委託(類型1)とは】
物品の販売(工事で設置する)を業として行っている事業者が、その物品等の製造を他の事業者に委託する取引
(3) 取適法の対象となる「資本金・従業員数」の基準
取引内容が「製造委託」に該当した場合、次に自社と外注業者の規模によって法律が適用されるかが決まります。
■建設業者(自社)の資本金が1,000万円超もしくは常時使用する従業員数が300人超
■外注業者の資本金が1,000万円以下もしくは常時使用する従業員数が300人以下
このような資本金関係にある場合、取適法の対象となります。
(4)発注者が守るべき義務と「通報リスク」
取適法の対象となった場合、発注者には厳しいルールが課せられます。以下のような対応が求められます。
■発注内容等の明確な書面明示
■受領拒否の禁止
■代金の減額の禁止
■返品の禁止
■不当な給付内容の変更(キャンセル等)・やり直しの禁止
【重大な通報リスク】
これらに違反した場合、外注業者(中小受託事業者)は公正取引委員会等へ通報する権利を有し、建設業者(委託事業者)はそれに対する報復を禁じられています。
現在、取適法に関する通報窓口は複数機関に設置されており、ニュース等で大きく報道される違反事例の多くは、この下請け側からの通報が発端となっています。
(5) まとめ:建設業法と取適法の両輪での対応を
建設業においては、建設業法と取適法が複雑に絡み合っており、両方の法令を正確に把握し、適切な発注対応を行うことは非常に困難です。意図せぬ法令違反を防ぐためにも、発注内容ごとの適切な法令判断のフローを社内に構築することが必要となります。 10/1の行政書士事務所の開業後、各社様のコンプライアンス対応を支援させて頂きたく存じます。
この記事を書いた人 Wrote this article
藤原 素雄
建設業・サービス業界にて20年以上、現場監督や設備購買、コンプライアンス推進の実務を経験。購買部員として数千件に及ぶ発注実務をこなし、下請取引と法令遵守の専門家です。 ISO(9001/14001/IATF16949等)推進員や内部監査員の知見も有しており、取適法(旧下請法)や建設業法に準拠した契約書・発注書面の作成から、社内規定の構築までサポートします。建築物石綿含有建材調査者や特管産廃管理責任者など現場資格も多数保有。長年の実務経験を活かし、発注側・受注側双方が安心して取引できる環境づくりと、より良い社会の実現に貢献いたします。