
【要点まとめ】
■必須の掲示義務: 石綿(アスベスト)を含むレベル3などの解体等工事を行う際は、「事前調査結果の掲示」と「作業内容等の掲示」を必ず現場で行う必要があります。
■石綿「なし」でも掲示必須: 事前調査の結果、石綿が含まれていなかった場合でも、「石綿なし」という調査結果の掲示が義務付けられています。
■A3サイズ以上の指定: 掲示板のサイズは法令により「A3サイズ(42.0cm×29.7cm)以上」と厳格に規定されています。
■公衆に見やすい場所へ: 大気汚染防止法に基づき、関係者だけでなく一般公衆(近隣住民など)が見やすい場所に設置しなければなりません。
(1)現場の必須ルール!「事前調査結果」と「作業内容」の掲示義務
こんにちは。10/1に神奈川県で行政書士事務所の開業を予定しています藤原素雄です。本日は、私が現場監督として実際に経験した知見も踏まえ、現場の法令遵守に関する実践的な知識を発信します。
今回は、石綿(アスベスト)解体等工事(レベル3)を行う際に必ず行わなければならない「事前調査結果の掲示」および「作業内容等の掲示」について解説いたします。
※解体工事前に行う「事前調査」自体や、発注者への説明義務・報告先については、以下の過去ブログよりご確認ください。
[リンク:石綿(アスベスト)事前調査は誰が実施できる?発注者への説明義務と報告先]
(2)【一覧表】掲示板に記載すべき必須事項(大防法・石綿則)
現場の掲示物についても、前回の「作業計画」と同様に「大気汚染防止法(大防法)」と「石綿障害予防規則(石綿則)」の両方の要件を満たす必要があります。それぞれの記載事項は以下の通りです。
(建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び 石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル抜粋)
①事前調査結果の掲示
解体等工事を行う全ての現場で掲示が必要です。
②作業内容等の掲示
石綿が含まれている(レベル3等の)解体等工事を行う場合に掲示が必要です。
(3)【要注意】掲示板は「A3サイズ以上」!石綿なしでも掲示必須
現場でよく見落とされがちな非常に重要なポイントが2つあります。
●サイズ指定はA3以上:
法令により、掲示板のサイズは「横42.0cm×縦29.7cm以上」または「縦42.0cm×横29.7cm以上」(=A3サイズ以上)と規定されています。小さすぎる用紙での掲示は法令違反となります。
●「石綿なし」でも掲示が必要:
事前調査の結果、石綿が一切使われていなかった場合でも、「石綿含有なし」という調査結果の掲示板を設置しなければなりません。
大気汚染防止法では「公衆に見やすいように掲示」することが求められています。近隣住民の方々に安心と安全を示すためにも、規定サイズを守り、現場の入り口など分かりやすい場所に設置しましょう。
(4)現場で使用する掲示板のサンプル(記載例)
実際の現場に掲示するフォーマットのサンプルは以下のようになります。
(建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び 石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル)
(※法令要件を満たしていれば、各社指定のフォーマットでも問題ありません)
【石綿含有ありの掲示サンプル】
【石綿含有なしの掲示サンプル】
(5)(参考)掲示義務に関する法的根拠(条文抜粋)
掲示に関する法的な根拠となる条文を抜粋いたします。
大気汚染防止法 18 条の 15(法律)
解体等工事の元請業者又は自主施工者は、第一項又は前項の規定による調査に係る解体等工事を施工するときは、環境省令で定めるところにより、前二項に規定する記録の写しを当該解体等工事の現場に備え置き、かつ、当該調査の結果その他環境省令で定める事項を、当該解体等工事の現場において公衆に見やすいように掲示しなければならない。
大気汚染防止法施行規則 19 条の 9、10(省令)
(解体等工事に係る掲示の方法)
第十六条の九 法第十八条の十五第五項の規定による掲示は、長さ四十二・〇センチメートル、幅二十九・七センチメートル以上又は長さ二十九・七センチメートル、幅四十二・〇センチメートル以上の掲示板を設けることにより行うものとする。
(解体等工事に係る掲示の事項)
第十六条の十 法第十八条の十五第五項の環境省令で定める事項は、次のとおりとする。
一 解体等工事の元請業者又は自主施工者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
二 第十六条の七第一号及び第二号に掲げる事項
三 解体等工事が特定工事に該当する場合は、特定粉じん排出等作業の対象となる建築物等の部分における特定建築材料の種類
(6)最後に:街中の解体現場の実態と「事前調査」の壁
街中で戸建て住宅の解体工事の現場を目にすることがありますが、残念ながら多くの現場で今回解説したテーマの「掲示」がされていないケースがございます。このような場合、大半が事前調査及び公共団体や労基署への届出自体もされていない(法令違反状態である)と推測されます。
なぜこのような事態が起きるのでしょうか。施工業者と発注者(施主)がそもそも制度を知らないということもありますが、最大の理由の一つは「事前調査に膨大な工数(費用)を要すること」だと私は考えています。
特に古い戸建て住宅では、建築時の設計図書が残っていないケースが大半です。その場合、現物調査として屋根材、軒天、外壁材、外壁塗膜、石膏ボード、天井・壁のクロス、床材等の「全て」を確認しなければなりません。しかし、これらの建材のほとんどは目視だけで石綿の含有確認を行うことができず、最終的には専門機関で費用をかけて「分析調査」を行うか、安全側に倒して「石綿が含有しているとみなして工事(みなし工事)」を行うことになります。
この調査の手間とコストが現場を圧迫しているのが実態ですが、だからといって法令違反が許されるわけではありません。適切な調査と掲示を行うことが、結果的に自社と元請け様、そして発注者様を守り、近隣トラブルを防ぐことにつながります。開業後は現場の法令対応やリスク管理支援をさせて頂きたく存じます。
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この記事を書いた人 Wrote this article
藤原 素雄
建設業・サービス業界にて20年以上、現場監督や設備購買、コンプライアンス推進の実務を経験。購買部員として数千件に及ぶ発注実務をこなし、下請取引と法令遵守の専門家です。 ISO(9001/14001/IATF16949等)推進員や内部監査員の知見も有しており、取適法(旧下請法)や建設業法に準拠した契約書・発注書面の作成から、社内規定の構築までサポートします。建築物石綿含有建材調査者や特管産廃管理責任者など現場資格も多数保有。長年の実務経験を活かし、発注側・受注側双方が安心して取引できる環境づくりと、より良い社会の実現に貢献いたします。
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