
【要点まとめ】
■買いたたきとは: 受注側(下請け)に赤字(利益が出ない)となるような著しく低い発注金額を不当に定めることです。
■よくある違法事例: 原材料高騰の価格転嫁に応じない、短納期の割増費用(残業代等)を払わない、などのケースが該当します。
■防止策: 発注担当者が、作業工程や諸経費まで含めた「適正な発注価格の積算(コスト分解)」ができる能力を持つことが不可欠です。
■適正価格は企業価値: 利益の出ない発注は最終的に品質悪化(手抜き)を招き、自社の首を絞めることになります。
(1)利益を奪う「買いたたき」とは?
こんにちは。特定建設業者の購買部員として6年間で約1万件の発注実務(建設工事や取適法対象取引など)を経験してきた、行政書士の藤原素雄です。10月1日に神奈川県にて事務所の開業を予定しております。
今回は、昔から耳にすることが多い取適法(中小受託取引適正化法/旧下請法)の禁止事項、「買いたたきの禁止」について、具体的な事例と防止策を解説いたします。
取適法第5条1項5号では、買いたたきを以下のように規定しています。
「中小受託事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い製造委託等代金の額を不当に定めること」
ストレートに表現すると、「委託事業者(発注側)が金額を決定する際、中小受託事業者(受注側)が赤字(利益が出ない)となるような極端に低い金額に設定すること」
(2)【具体例】よくある「買いたたき」3つの違法ケース
では、どのような行為が「買いたたき」とみなされるのでしょうか。実務で非常に起こりやすい3つの例を挙げます。
1.一方的な指値発注: 委託事業者が、通常支払われる対価を大幅に下回る「指値(ターゲット価格)」を一方的に押し付けて発注代金を定めるケース。
2.価格高騰のしわ寄せ: 材料費やエネルギー価格の高騰により、中小受託事業者から見積書金額の引き上げ要請があったにもかかわらず、協議に応じず従前通りの据え置き価格を定めるケース。
3.短納期対応費用の未払い: 通常7日要する機械加工を5日で短縮委託した際、短納期に対応するための「残業費用(深夜手当)」や「休日出勤費用」などを加算せずに発注金額を定めるケース。
(3)防ぐカギは「適正な積算能力」にあり
買いたたきを防止するためには、発注前に見積書を提出してもらい、十分な協議を行うことが大前提です。
しかしそれ以上に重要なのは、「委託事業者の発注担当者が、適正な発注価格の積算(コストの分解と算出)ができる能力を身につけること」だと思います。
例えば、【マシニングセンタを使用した機械加工】を委託する場合、発注金額には少なくとも以下の要素が含まれていなければなりません。
•鋼材の費用: 定尺での購入か、鋼材業者でカットしたものを購入するか
•設備費: マシニングセンタのチャージ費(機械の稼働単価)
•作業費: NCプログラムの作成、材料のセット、実際の加工にかかる人件費
•検査費: 完成品の品質検査にかかる費用
•出荷費: フォークリフト等で4t平ボディトラックに積み込む作業費
•運搬費: 委託事業者の指定場所までの往復運搬費
•諸経費: 最低でも全体価格の1割程度の管理費や利益
これらを想像できず、「ただ削るだけだからこの金額でやってよ」と発注してしまうことが、買いたたきの温床となります。
(4)適正な発注価格は「企業価値」を高める
委託事業者にとって、発注価格を抑えてコストダウンを図ることは大事な要素です。 しかし、儲けが全くない価格で発注した場合、受注側は何とか利益を確保しようとするため、見えない部分で何らかの「手抜き」等が行われる可能性が高くなります。結果的に、最終的な完成品の品質悪化に結び付いてしまうのです。
建設業法においても「不当に低い請負代金の禁止」という同様の規定がありますが、適正な価格で発注し品質を担保することは、一つの重要な「技術」であり、最終的に委託事業者の企業価値を高めるものだと私は確信しています。
取適法には11の禁止事項があり、そのすべてを自社だけで完全に理解し、運用体制を構築することは困難です。来月の開設後、当事務所では、1万件の発注実務経験を活かし、取適法に対する対応方法や適正な書面作りの伴走サポートを行ってまいります。
・「うちの発注価格の決め方は、取適法に違反していないか?」
・「法律を守りつつ、協力会社と良好な関係を築ける発注フローを作りたい」
・「現在の契約書や発注書面が適正かどうか確認してほしい」
このような、自社の発注フローにご不安がある企業様は、どうぞお気軽にご相談ください。
問い合わせ及び初回のご相談は【無料】で承っております。
まずは以下のホームページの問い合わせフォームより、些細なことでもお問い合わせをお待ちしております。
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この記事を書いた人 Wrote this article
藤原 素雄
建設業・サービス業界にて20年以上、現場監督や設備購買、コンプライアンス推進の実務を経験。購買部員として数千件に及ぶ発注実務をこなし、下請取引と法令遵守の専門家です。 ISO(9001/14001/IATF16949等)推進員や内部監査員の知見も有しており、取適法(旧下請法)や建設業法に準拠した契約書・発注書面の作成から、社内規定の構築までサポートします。建築物石綿含有建材調査者や特管産廃管理責任者など現場資格も多数保有。長年の実務経験を活かし、発注側・受注側双方が安心して取引できる環境づくりと、より良い社会の実現に貢献いたします。