危険物の「指定数量以下」でも要注意!消防法と市町村条例の「1/5ルール」を解説

危険物の「指定数量以下」でも要注意!消防法と市町村条例の「1/5ルール」を解説

【要点まとめ】

■ガソリンやシンナーの保管量が消防法の「指定数量(200L)」未満であっても、指定数量の「1/5(40L)」を超えると市町村条例により消防署への届出義務が発生します。
■別々の容器・用途であっても、危険物は「合計量」で計算されるため、うっかり基準を超過するケースが多発しています。
■廃棄時には「特別管理産業廃棄物」となり、労働安全衛生法上の「有機溶剤」としての規制も同時にかかります。
■無届けでの保管が元請けのコンプライアンス監査で発覚した場合、重大な法令違反として「取引停止」等のリスクに直結します。

(1)事例:合計40Lの保管で条例違反になる?

建設業や加工業、自動車整備業などの現場において、無意識のうちに法令違反に陥りやすいのが「少量危険物の保管・届出」です。

例えば、横浜市内の作業場において、以下のような保管状況があったとします。

●予備のガソリン:20リットル
●塗装作業に使うシンナー:20リットル

「たったこれだけの量なら、消防署への届出なんて必要ないだろう」と思われる方が多いかもしれません。
しかし、これは明確な条例違反(無届出)となる可能性が高いケースです。

(2)知らないと怖い「指定数量の1/5ルール」とは

ガソリンと上記のシンナーは、いずれも消防法上の危険物「第4類(引火性液体)>第1石油類」に分類され、指定数量が200リットルと規定されています。この数量以上を貯蔵(保管)する場合は、消防法による厳しい「許可」が必要です。

ここでの落とし穴は、「許可が不要=何もしなくていい」わけではないということです。

先ほどの事例では、ガソリンとシンナーを合わせて合計40リットル(指定数量200Lのちょうど1/5)を保管しています。
指定数量の1/5以上〜指定数量の1倍未満の保管をする場合、各地方公共団体の火災予防条例等により「消防署への届出」が義務化されています(※各地区の条例により運用内容は異なります)。横浜市においても、このケースは届出の対象です。

(3)現場での確認方法:容器ラベルとSDS(第15項)

消防法と各地方公共団体の条例で二段構えのルールとなっているため、非常に分かりづらいのが実情です。今一度、現場の保管状況と内容物の分類をご確認ください。

危険物の分類は、原則として容器に記載されています。もし記載がない、あるいは小分けにしていて分からない場合は、メーカーから「SDS(安全データシート)」を取り寄せ、その中の「第15項(適用法令)」を確認してください。

(4) 産廃・安衛法の連鎖リスク(特別管理産業廃棄物と有機溶剤)

危険物取扱者(乙種4類)や有機溶剤作業主任者の実務視点から申し上げると、ガソリンやシンナーの管理は消防法だけでは完結しません。

例えば、使い終わった廃シンナーを廃棄する場合は、通常の産廃ではなく「特別管理産業廃棄物」に該当します。廃棄のための保管や排出をする事業所は、「特別管理産業廃棄物管理責任者」の選任(届出)や専用の掲示板の設置が必要です。

また、労働安全衛生法においても有機溶剤(第2種有機溶剤など)に分類される製品が多く、局所排気装置の設置、特殊健康診断の受診、作業環境測定の実施が義務化されています(一部適用除外申請あり)。

(5)まとめ:元請けの監査強化と取引停止リスクを防ぐために

近年、建設業等の元請業者による現場監査やコンプライアンス・チェックは年々厳格化しています。万が一、現場監査で「少量危険物の無届保管」や「不適切な産廃保管」が発覚した場合、それが引き金となって取引停止などの重大な経営リスクに直結しかねません。

「知らなかった」では済まされない事態を防ぐためにも、現場の取り扱い物質の棚卸しと、関連法令の横断的なチェックを強くお勧めいたします。

現在は10/1の行政書士事務所開業に向けて準備を進めております。開設後は、これら現場で見落としがちな法令を含めた総合的なコンプライアンス体制の構築をサポートしていきたいと思っております。

この記事を書いた人 Wrote this article

藤原 素雄

藤原 素雄

建設業・サービス業界にて20年以上、現場監督や設備購買、コンプライアンス推進の実務を経験。購買部員として数千件に及ぶ発注実務をこなし、下請取引と法令遵守の専門家です。 ISO(9001/14001/IATF16949等)推進員や内部監査員の知見も有しており、取適法(旧下請法)や建設業法に準拠した契約書・発注書面の作成から、社内規定の構築までサポートします。建築物石綿含有建材調査者や特管産廃管理責任者など現場資格も多数保有。長年の実務経験を活かし、発注側・受注側双方が安心して取引できる環境づくりと、より良い社会の実現に貢献いたします。